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ブックスタンドの目的は、本の表紙を効果的に「見せる」ことで、内容とデザインの魅力を引き出すことです。通常の本棚では背表紙が並び、その中で目立たせるのは難しく、特に同じようなデザインが続くと視覚的に混沌とした印象になりがちです。しかし、表紙を前面に出すことで、編集者やデザイナーが本に込めた意図や美しさがより強調され、読者にアピールできます。
書店では、限られたスペースで多くの本を展示しつつ、その表紙を最大限に引き立てることが求められます。ブックスタンドは、平面的な展示だけでなく、立体的な展示や未活用のスペースを活かしながら、本の表紙を「見せる」から「魅せる」へと進化させるツールです。展示方法を工夫することで、より多くの本が際立ち、読者の目を引く新しい可能性を模索しています。
本を魅せる
本の陳列方法には平積み、背だし、面出しの三通りがあります。平積みは書店で一斉にベストセラーを平たく積み上げ、売れ行きの良さをアピールする方法ですが、ここでは関係ありません。 背だしは本の背表紙を見せる手法で、本棚に並べることが一般的です。多くの本を効率的に陳列できますが、本自体が埋もれがちになりがちで、主に収納の目的があります。
一方で、面出し(または面陳)は本の装丁をそのまま見せる手法です。特に美術書では、その内容をコンパクトにプレゼンテーションするため、美術書のデザインが最も注力される部分です。面出しは本の装丁デザインを強調し、その本の魅力を一枚で表現する手法です。
ブックスタンド
黒子の様な黒い展示ツール
一般的なアクリル製のブックスタンドとスチール製のブックスタンドにはそれぞれ特徴があります。アクリルは透明で軽量、取り扱いが簡単な素材ですが、紫外線に弱いため経年劣化が起こし内部が白濁する恐れがあります。一方でスチールは頑丈で重いため、大きな負荷にも耐えられます、しかし薄い板では簡単に曲げやすいため無味乾燥な印象を与えてしまう可能性があります。
スチールを本来の強さと鉄らしさを引き出すためには、十分な肉厚を持たせる必要があります。これによりスチールは曲げることで弾力を生み出し、小さな断面でも大きな負荷を支えることができます。また、比重が重いため、アンバランスな形状でも対象物をしっかりと支えることが可能です。
壁から本を持ち出し面で展示するブックスタンド
従来の方法では、壁にブックスタンドを取り付ける際には、バー状のコの字型あるいはL字型の形状が一般的で、そこに本を載せて垂直に立てかける手法が一般的でした。また、有孔ボードにフックを取り付けて本を飾る手法もよく見られました。しかし、これらの方法では飾られた本が壁に対して平行になり、展示効果が制限される傾向がありました。
Piega Wallは、壁に向かってブックスタンドを配置する際に、従来の方法とは異なり、人の目線の高さに合わせて3段階の持ち出し長さで構成されています。背後にあるローレット加工されたハンドルはトレイを固定するためのもので、回転範囲内で角度を自由に固定できます。これにより、展示物を展開する際に最上段から下にいくにつれて角度が水平に近づき、視線から見て自然な形で展示物を見下ろすことができます。同時に、壁面を有効に利用しながら、面出しのブックスタンドとしても機能します。
面を見せて飾る
スチールプレートと合板の組み合わせから成る、斜めに傾けた木製のディスプレイスタンドがこちらです。書籍、カタログ、パンフレット、CDなど、店舗や展示会における展示什器、ディスプレイ什器として幅広い用途にご利用いただけます。このディスプレイスタンドは、積層合板と曲げ加工されたスチールプレートの組み合わせにより、本を面で傾けて自然な形で展示することを可能にしました。
実例
File575 芝パークホテル
銀座蔦屋書店の監修により、ライブラリーホテルとして芝パークホテルがその新たな業態を静かに展開しておられます。ここでは、宿泊客以外の方も利用できる共有スペースとしてのホワイエやラウンジが用意されており、主に美術書や写真集などが展示され、ゆっくりと座って読書を楽しむことができます。
File243 東京都写真美術館ディスプレイ什器として
東京都写真美術館は、日本初の本格的な写真映像文化施設として創設された美術館です。写真一般の美術館としては、日本で最初のものであり、個人名を冠したものを除くと歴史的な存在と言えます。ここでは、図書室において展示スタンドとしてマルゲリータのブックスタンドが活用されています。
File557 角川武蔵野ミュージアム
角川武蔵野ミュージアムは、KADOKAWAと埼玉県所沢市に2020年11月にオープンした博物館・美術館・図書館・アニメミュージアムが融合した文化複合施設です。その本の展示にマルゲリータのブックスタンドをお使いいただいています。
File230 大洋金物ショールーム展示什器
大洋金物さまは、浴槽や洗面器、キッチンなど水まわり製品を中心に世界の上質なデザインアイテムを輸入販売しておられます。写真は港区南麻布にあるショールームです。ガラス棚上段、カタログが置かれたA4ブックスタンドの様子です。
写真:什器 Piega データ入力用ブックスタンド
File669 トヨタ博物館 貴重資料室(非公開)
トヨタ博物館はトヨタ自動車創立50周年記念事業の一環として、1989年に開館した博物館です。その展示ツールとして「Piega A4ブックスタンド」「Piega 本を開いて見せるブックスタンド」をご利用いただいています。
File784 フェアフィールド・バイ・マリオット(マリオットインターナショナル)
このホテルチェーンには、地元の歴史と名品を静かに紹介するコーナーが一貫性のあるブランディングで統一されています。ホテルの建物の構造や内部の造作には、独自のルールが制定されており、各ホテルが異なる外観を持ちつつも、共通のディテールが統一されています。これらの統一されたディテールを有効に活かし、書籍の展示台として「Piega ブックスタンド」が採用されています。
考察
本の装丁
本の装丁は、書籍の全体的な印象を決定づける役割を担っています。書籍が内容で勝負するのはもちろんですが、装丁はその第一印象を左右し、読者に対して魅力的で興味深い本であることを伝えます。たとえば、本屋で無目的に物色する際、目に入る最初の要素が装丁です。美しく洗練されたデザインやカラフルな表紙は、読者の視線を引きつけ、手に取りたくなる魅力を持っています。
装丁とブックデザイン
本の装丁はその外側のデザインに焦点を当てる一方で、ブックデザインは外観だけでなく、そのコンテンツのビジュアル的なデザインも含めたトータルなデザインを言います。表紙は本の顔であり、そのデザインが本の売り上げに影響を与えることもあります。そのため、読者の目を引く印象的なデザインが求められます。一方ブックデザインは著者の作品への理解を深め、作品の魅力を伝える上で不可欠な存在となっています。
ブックスタンドの役割
ブックスタンドはその本の表紙を見せるツールです。しかしそこでは同時に「手に取って中身を見せる」行為を暗に推しています。更に言えば「手に取って中身が見たくなる」様な装丁、ここが大事です。前述の様に本のデザインはその装丁だけでなく中身のブックデザインも重要です。
「知らなかった」もしくは「買う気が無かった」客に対してその表紙をきっかけに手に取らせ、中身を見させ、購買に繋ぐ。その橋渡しの一部をスムースに行えるブックスタンド、これが理想です。あくまでも橋渡しですが本の表紙の見え方がいかに心地よいものであるか、そこにブックスタンドのあるべき姿があります。
実例に関連するプロダクト