沖縄で生まれ育ち、東京で大学生活を送った上原沙也加さんはそこで沖縄を外から見ることが出来、その経験を踏まえ、生活の場所としての沖縄の姿を写真で表現されています。
「眠る木」
ニコンサロンにて 2022 年 12月に開催された上原さんの個展「眠る木」の会場風景です。シリーズ「眠る木」は、2016 年から 2022 年にかけて沖縄島で撮影されたシリーズです。
上原さんが生まれ育ち、現在も暮らしている生活の場所としての風景を起点にしながら、そこには沖縄の抱える複雑さの断片が静かに捉えられています。上原さんの写真の風景には、ほとんど人は写っていません。マネキンの指、レストランの客席、ジュークボックスを掠める機影、布貼りの聖書、マクドナルドのサイン……。日常的な光景は人の営みを湛え、声なき声で語りかけられているような気配を帯びています。
タイトルの「眠る木」はギンネムの木から想起されました。又吉栄喜が小説「ギンネム屋敷」の扉に、「終戦後、破壊のあとをカムフラージュするため、米軍は沖縄全土にこの木(ギンネム)の種を撒いた」と記すように、沖縄のどこにでも繁茂しているギンネム。小さな葉が、鳥の羽のように並んで 1 枚の葉を構成する、特徴的な葉の形。夜には葉を閉じて眠るように見えることから、沖縄では「ニブイギ(眠る木)」と言われています。現在、目の前に在る日常の風景から、それぞれが経てきた時間を想像するような地続きの眼差しが写真の細部に立ち現れています。
その個展での作品を展示するアートフレームとして「FRAME ピクチャーフレーム SANO」をお使いいただきました。その時の模様です。
この写真展では、アートフレームの中心を一定の視線の高さに揃え、水平方向に連続して配置しています。このレイアウトにより、来場者は水平に移動するだけで展示写真を自然に鑑賞できる仕組みです。さらに、この動きによって、写真の大きさに気を取られることなく、作品そのものに集中することができます。
本展の目的は、写真家が表現したいメッセージを、観る人が写真を通じて心に描くことです。このような展示構成により、写真家の意図がより明確に伝わるように工夫されています。
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