埼玉県の新築戸建て住宅にお住いのお客様です。その廊下のアルコーブに「Shef 壁一面の本棚奥行350mm」を設置頂きました。ダークブラウンの天然木フローリングを施した床と色調をほぼ合わせた天井に挟まれた白い矩形の壁が印象的な廊下、その壁面を切り取るような高い位置からの採光が、単純な構成のこの廊下を非日常的な空間にしています。その廊下を照らす陽光を損なうことのない様に本棚の高さは調整され、窓がある箇所は5段、右端だけ7段、天板を渡した状態で置かれ、高窓に深みを与えています。
アルコーブに設置
アルコーブとは、壁のくぼみやへこみを指します。最近ではマンションの玄関が部屋側に窪んでいる空間を意味することが多いですが、もともとはヨーロッパで部屋の一部が視線から少し遮られる独立したスペースを指す言葉です。アルコーブはマンションの入口にある場合、外部からの視線を遮り、玄関扉を開け閉めする際に廊下を歩いている人の通行を妨げません。また、一定の広さがあるアルコーブは、有効な空間として活用することができます。
このケースでは、廊下に設けられた広いアルコーブに幅6コマの本棚が、恰も計画段階からその設置を前提としていたかのように自然に収まっています。
ディスプレイ棚として使う
この本棚には、各コマに適度な空間を保って本や家族のフォトフレームなどが配置されています。一見するとバラバラに見える収納物も、グリッドによって均一に仕切られているため、全体としてまとまりを感じさせます。これにより、圧迫感が軽減され、控えめで落ち着いた雰囲気が漂います。各コマの配置は意図的であり、視覚的なバランスを保ちながら機能性も確保されています。
また、この本棚は、さまざまなアイテムを効果的にディスプレイするための工夫が施されています。例えば、本とフォトフレームが交互に配置されることで、視覚的なリズムが生まれ、単調にならずに見た目も楽しめます。さらに、適度な空間を保つことで、各アイテムが独立した存在感を持ちつつも、全体として落ち着いた印象を与えます。本棚はただの収納スペースではなく、インテリアの一部としても機能します。控えめな空気感が漂うこの本棚は、部屋全体に静穏な雰囲気をもたらします。
もう一点、ディスプレイスペースとして活用できるのは最上段の平らな棚板です。本棚の奥行きと同じ深さがあり、この棚板をステージと考えると、深い位置に配置された光源をバックライトとして利用できる展示のための場所と言えます。
ここではそのステージには恐竜の骨格模型が並べられています。模型を構成する木片は様々な角度に配置されており、バックライトからの逆光を受けて異なる明るさで反射します。静止画で捉えたこの写真でも、木片が様々な色合いに分かれて見える様子が確認できますが、日中の時間の経過とともに変化する陽光の中では、その見え方が無限に変化することは容易に想像できます。
このように、最上段の棚板はただの収納スペースではなく、光と影の変化を楽しむことができるディスプレイエリアとして機能します。展示物の魅力を最大限に引き出し、インテリアとしての美しさを強調する役割を果たしています。
アルコーブを通り過ぎた廊下の屈折点にある階段から下りて振り返ると、アルコーブの見え方が来た時とはまた異なることに気付くでしょう。単調で行き交うための通路としてだけ使われがちな廊下も、アルコーブを設けて高い位置から採光を取り入れるだけで、日常の風景がこのように変化します。
アルコーブは、視覚的なアクセントを加えるだけでなく、光の変化を楽しむことができる場所として機能します。階段を下りた視点から見るアルコーブは、異なる角度からの光の入り方によって、来る時とは異なる印象を与えます。このように、アルコーブを設けることで、廊下という通過点が、日常の中で新たな視覚的体験を提供する場へと変わります。
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