神奈川県にお住まいのお客様。戸建て住宅をこの度リフォームされてお住まいになっています。
広い窓から庭の様子がよく見える、開放的でありながら落ち着いた雰囲気のリビングです。リフォームにより、床に座る生活を基調としたリビングスペースです。勾配天井の傾斜の先には高窓と庭に面した大きな掃き出し窓があり、庭に茂る植物の様子が伺えます。室内には大ぶりの葉をもつ観葉植物の鉢がいくつも飾られているので庭の気配と室内の空間とが溶け合うように馴染んでいます。

白い壁にアクセントを描くダークブラウンの窓枠と周縁、板張りの天井やフローリングの木材、ダイニングとの境目に現れている柱などが山荘のような雰囲気を醸し出していて、温かみの感じられるインテリアです。そして、床面から浮遊しているかのように見える大きな天板が視界に入ります。床に座る生活の中心となる「Tavola 座卓」です。

リビングに置かれた「Tavola 座卓」は、ここで過ごす際の姿勢を規定して床に座る生活を作り出しています。生活の中の動きは座卓の天板を起点として、自然と低い位置で行われるようになります。ソファに身を預けて音楽に耳を傾けたり新聞や雑誌を広げてくつろいだり、お茶を飲んだり、とりとめもない話に興じたりする時の姿勢は、座卓を起点として、床の近くに低く座る体勢になります。座り姿勢になると目線の出発点が椅子座よりも低くなるため天井と床との空間が広がるため部屋全体が広く感じられます。

本件では、低く座る姿勢を受け止める椅子としてローソファを選んでいます。ローソファは床から座面までの高さが座椅子よりも高いので、膝や腰への負担がより少ない姿勢をとることができます。床には毛足の長いラグが敷かれていて、ラグの上に寝転んでさらに床に近い姿勢になる、その心地よさまでも想起させられます。ローソファの位置から座卓の更に向こう側の窓の先にある庭まで見通せる視界が得られるために、リビングが庭へと連続して拡大していくような開放的な空間が作り出されています。

床に座る生活は伝統的な日本文化においては慣習的で、日本の生活文化に根付いているスタイルの一つですが、現代の日本では失われつつあるスタイルでもあります。座卓によって作り出される室内環境によって呼び覚まされる座り姿勢の暮らしは、和室の持つミニマルな日本的美意識や自然と調和した生活の豊かさを思い出させてくれます。

Tavolaは、天板を機能的に美しく見せるために他の要素を極力排除してミニマルなデザインを試みたテーブルとデスクのシリーズです。テーブルあるいはデスクは、天板と脚部によって構成されるツールですが、その機能の本質は、天板の「面」に顕在します。部屋の中に机が置かれることによって、これまでに無かった或る高さに「面」が出現します。この「面」がその部屋の持つ空気を変え、その周辺の動きを変化させ、「室内」を作っていきます。
Tavolaの座卓は「床に座る」という行為を呼び起こすことと「大きなテーブル面」を成立させることを目指してデザインされています。そのために最小限の要素で構成しながらそれぞれを単純な形状に収束させ、全体をミニマルなデザインに昇華させようと試みています。その到達点が、天板、柱脚板、桁、の3つの面が互いに直交した構造です。
両脇に配した2本のプレート状の脚と、天板を受ける梁状の2枚のプレートを嵌合させ、脚部の上に配置する天板は4本の線で囲まれる面で支えられて、立体的なX、Y、Zの三方向に組み合わせられることで剛性が保たれて、全体として一つの安定した塊になっています。仮にぐらつきが発生したとしても緩んだ箇所のボルトや円盤を絞め直すことで再び安定する形に戻ります。
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