群馬県太田市にある予約制のカフェ「呑龍文庫ももとせ」さん、客席より一段高く奥まった壁面に「Shelf 壁一面の本棚 奥行250mm」を2台並べて設置いただきました。
一見カウンター付き本棚に見えますが既存の棚とその上部の天板をうまく利用してしっくりする雰囲気に作り上げてます。
「百年=ももとせ」
百年は人の一生に例えられる時間。長い時間、楽しんだり、興味を持てる「もの」や「こと」や「ひと」に出会える場所になるように願いを込めて店名を「ももとせ」と名付けられたそうです。
茶道・茶の湯の雰囲気を味わえる静かな店内。フロアーの家具、さりげなく置かれているアンティークの小物、木工製品もオーナーの嗜好で集められた落ち着いた空間になっています。本棚に収められている書物は自由に読むことができます。
日本茶と上生菓子を楽しむ空間、その味だけでなくその背景の作り手や文化、そして今ある空間と時間を楽しめるようなカフェ、をコンセプトに営業されている「呑龍文庫ももとせ」様。
既存の棚の上部の壁面に、縦5コマ×横5コマの「Shelf 壁一面の本棚 奥行250mm」を2台並べてお使いいただいています。設置するスペースに合わせて高さを調整し、両端のセルのサイズをわずかに調整した結果、もともと棚の天板と天井の間にあった空間に丁度収まるサイズになっています。このため、平面的な剛性を確保するために通常配置するブレース材は置かず、全てのセルを収納とディスプレイに活用していただいています。
マルゲリータの本棚は、縦板と横板を短いスパンで嵌合させて形作られているため、本棚の中に重い蔵書を充填して収めても棚板がたわむことがほとんどありません。写真集や美術書など重量のある書籍でも、安心して置いていただけます。このカフェでは大きな壁面に本棚を置いて、カフェの空間で過ごす時間を彩るオブジェクトと書籍を配しています。いずれもカフェ全体に流れる美意識を具現化するためにセレクトされています。最上段は全てのセルがブランクになっています。2段目の棚にもいくつか見られる「何も置かれていないスペース」と相まって、垂直の棚板が規則的に並ぶ欄間のような空間になっています。こうして意図的に作られた空間は壁面に明るさと軽さをもたらします。また同時にその空間は余白を大切にする美意識を静かに語っています。
中央3段には書籍が並び、自由に手に取って読むことができます。お茶の香と味わい、手に触れる器の感触などを楽しみながら、カフェで過ごす時間を共にすごすために選ばれた書籍が収められています。月に一度は読書会も開催されているそうです。その背表紙が本棚に並んでいる様子は、さまざまな色からなる細いストライプが集積してできた混色の面のようにも見えますが、引いた視点から眺めると、ストライプが密度高く織り上げられた帯が水平に広げられているようにも見えてきます。こうして3本水平に並んだ帯がこの壁面に安定して落ち着いた景色を生み出しています。
最下段には、それぞれのセルに陶器の鉢や茶器が並びます。セルの内部の空間の余白が手前の既存の棚と連携し、等間隔に区切られた小さな世界の内側に広がりを感じさせています。つくりのよい、品のある日用品として日本中から集められた品物の世界観を感じとることのできるディスプレイスペースです。棚の前のアンティークのテーブルに並べられた茶葉や茶器などにも、視線の流れが自然に誘導されています。
奥行き250mmの本棚は、設置されたスペースの天井部分に埋め込まれたダウンライトがちょうど棚板の見付を照らす位置に配置されています。ダウンライトは設置位置の真下を中心に照らすため、明るさの調整によりその雰囲気を楽しむことのできる照明ですが、本件ではその光線が本棚の棚板と収められた書籍の背表紙、棚板の奥に見える建物の壁面にハイライトと影を作り、陰影のコントラストを作り出しています。また本棚の左側の壁面は大きな窓で、紗幕を通して入ってくる外光が室内に柔らかく反映しています。
本棚の材質は無塗装のシナ合板です。その明るい木の色味がダウンライトと窓からの光を受け止めてできる陰影が、グラデーションを作りながら、静かな佇まいを作り出しています。室内は、白い壁と白い天井に薄いグレーの床と、抑えられた色調が基本になっていますが、家具として使われている木材の質感とその色の濃淡が、カフェの空間に自然の気配を静かに感じさせています。
本棚の見付による細いラインがまるで障子の桟のような軽やかな外観を作り出しています。大きめなグリッドなので、和のテイストに加えてモダンな印象も生まれています。本棚のグリッドがカフェの天井の現し梁の力強い格子のパターンがすぐに目に入りますが、本棚の手前の棚の上に並べられた木製の四角いトレーも、同じ矩形パターンを繰り返したバリエーションです。また既存の棚の扉の輪郭が細い線で現れていて、これも矩形を描いています。その効果も相まって、カフェの全体の印象はとても安定しています。そこに、重厚な円形テーブルや木製チェアの背などの印象的な曲線が差し込まれています。
このようにして出来上がった、空間と時間を楽しめる静謐なカフェにお客様がやってきて、それぞれがお茶を愉しみながら大切な時間を過ごされます。美しい和菓子、抹茶や煎茶、丁寧に淹れられたハンドドリップコーヒー、それらを提供する器の丸みを帯びた形状、スプーンの曲線などが、より印象的に、あるいは完全にさりげなく、そこに浮かび上がってきて、香り、味わい、器の手触り、お湯の沸く音などが、豊かに五感を満たしていきます。その舞台のしつらえを、マルゲリータの本棚が支えています。
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壁面を天井まで最大限に活用できる壁一面の本棚。専用の収納ボックスもある組み立て式。
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