品川区にある設計事務所、エー・スリー・デザイン(株)様その事務所移転に伴うオフィスリノベーションの一環としてそこの資料棚に「Shelf 壁一面の本棚 奥行350mm」を採用いただきました。1階の一室を駆体そのまま顕しにしたワイルドな空間に置かれています。照明の効果も相まって力強い静かな空間になっています。
天井を顕しにする
オフィスのリノヴェーションに於いてその既存の天井を外して躯体を顕にしたケースをたまに見掛けます。その殆どがデザイン系もしくは設計事務所といったクリエイティブな業務形態の会社が多いです。その理由を考える前にここでオフィスのリノヴェーションに際して天井を外す行為の功罪を考えてみたいと思います。まずメリットとしては
●天井が高くなる これはそのまま既存の天井が無くなった分天井高が上がるという事です。
●気持ちのいい空間が得られる 高くなるのと同時に打ち放しコンクリートの天井に面することにより気持ちのいい空間になる。
一方デメリットとしては
●冷暖房の効率が悪くなる どの程度悪くなるかは単純に室内の容積の増分によります。
更に法的(建築基準法、消防法)に不都合な箇所が生じると結果的にそこを直さなければならない可能性があります。具体的には
●防煙区画に変更が生じる可能性がある 天井面から80cm以上下がった壁があると(梁も含みます)そこで囲まれた部分に防煙区画が生じます。すなわちフラットな天井面に於いては何もなくても天井を外すことによって梁が露出してその梁成が80cmを超えると必然的に区画に変更が生じてしまいその箇所の排煙が出来なくなる可能性もあります。
●消防設備の変更を要する場合がある 大規模の建築物でスプリンクラー設備がある場合だとその警戒範囲が変更になるのでスプリンクラーの向きを変える、または増設する等の工事が必要になる場合もあります。
その建物の規模が大きければ大きいほどこうした事が生じる可能性がありますが、逆に小規模のビルに至っては殆どないと言ってもいいです。それよりもそのデメリットとして挙げた内容を乗り越えて構成された空間は本件の様に卓越したものがあります。その効果はたいへん得難いものです。
構造躯体としてのコンクリート
再度構造躯体に関して。
ここで言う構造躯体というのはコンクリートの場合を言います。しかしコンクリート打ち放しとは一般的に言われるコンクリート打ち放しとは似ていますが違います。一般的に言われるコンクリート打ち放しはその打ち放し仕上げ面を見せるべく型枠の仕様、ホームタイと呼ばれる緊結金物の配置、コンクリート打設時のコンディションの設定等にそれなりの気を遣います。
その一方で天井を外した状態でのコンクリート打ち放しとは仕上がり面に対するケアはほぼない状態で作られるので躯体であり寸法さえ守られていればいい状態で作られます。また天井裏に隠されている設備配管、配線も隠れると言う前提で施工されているのでその見た目は気にしていません。施行中に遺された墨も普通に残ってます。俗語まではいきませんがコンクリート打ち放しに対して後者は「コンクリートやりっ放し」と言われることもあります。
人の作為が入っていない無の状態の造形。その機能だけを求めた飾っていない形。それが意識的に作られたコンクリート打ち放しとの大きな違いです。本件の構成はまさにそこを求めています。
天井を露わにしたオフィスデザインを実行する上で一番重要なのはその点です。しかし一方で外してみないと分からないと言う事実もあります。しかし天井を外して構造体を顕にした結果そもそも隠される部位であった箇所においてもそこが「きちんと納められている」ことが判明するとその建物がいかに丁寧に作られていたかも分かるという喜びもあります。当然その逆もあります。そうして判明した顕にされたコンクリート打ち放しとまるで共存するかのような事例の紹介です。
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壁面を天井まで最大限に活用できる壁一面の本棚。専用の収納ボックスもある組み立て式。
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