信州青木村の市街地から夫神岳方面、義民の墓に向かって進んだ先、急な坂道を登ると山小屋のようなカフェテラスが現れます。店内に足を踏み入れると、船底状の高い天井から下がる木製の縁甲板が目に飛び込んできます。木のぬくもりに包まれた開放的な空間は、明るく、広々としており、窓からは青木村の家々や信州の山々が一望できます。これが、人気のカフェ「ワタリドリのカフェ」です。
ヌック 窓を生かす
ログハウスの室内に入ると、正面にある窓を活かしながら、壁一面に本棚が設置されています。この本棚は、左右対称のL字型と逆L字型とも言うべき本棚が窓を挟んで繋がり、壁面を形成しています。
下段は奥行350mmで、上段は奥行250mm、その切り替え部分にはちょうど良い平台が自動的に形成されます。窓下に位置するこのカウンターは、上部が本棚でないため、机のようにも使用でき、また同時にやや高い位置にあるため、座って窓からの景色を楽しむこともできます。所謂住宅に於けるヌックの様な存在ですが、住宅に於けるそれと大きく違うのはそこに籠って自分だけの空間を作るのではなくあくまで外の景色を楽しむ空間であると言う点です。
本棚の開口部は、ヌックとして活用されています。ヌックとは、家の中の隅や突き出た部分を利用して作られた、コンパクトで居心地の良いスペースを言います。この言葉の背景には、広い室内にヌックのような隠れ家があることで、家で過ごす時間がより充実するという考えが含まれています。このロッジでは、まさにそのまま、自然の中でリラックスできる仕掛けが出来ていて、ヌックに腰を下ろして外の景色を眺めると、心が安らぎ、穏やかな時間を楽しむことができます。
窓を生かして本棚を作る
窓としての機能は生かしながらその周囲に本棚を構成する。このスタイルを具現化する方法はいくつかありますが、一番簡単なのは、中央に奥行350mmの本棚を置き、両端に段差のあるタワー型の本棚を配置する方法です。もう一つは、下段に350mmの本棚を通しで設置し、その上に奥行き250mmの本棚を置く方法です。
経済的な観点からは、2台の本棚で対応することが理に適っていますが、組み立てはややもすると複雑になりがちです。しかし、オーナーはその点に丁寧に取り組みながらジョイント部や窓周辺の収まりなども大変綺麗に仕上げています。
この壁一面の本棚は、中央に窓を取り込んだデザインです。天井の高さからは壁一面まで届きませんが、中央に空隙を残しつつ、シンメトリーに配置された両端のタワー型本棚と相まって、この山小屋風のロッジ内で際立った存在感を放っています。
映写面を作る
窓の上部からスクリーンを下ろすと、そこは一変してプロジェクターの映写面となります。当日は予定していた場所にプロジェクターを配置できなかったため、上映は実現しませんでしたが、室内を暗転させた状態での大画面は、特に高い天井の下では、心地よい雰囲気を醸し出します。
都会で見る映写面と大きく異なるのは、室内が暗転するだけでなく、窓を通して見えていた素朴な風景が一変して映像空間に変わることです。自然の風景が仮想空間に変容する、その劇的な瞬間が魅力的です。
美味しいコーヒー
カフェで豊かな時間を過ごすためのツールは美味しいコーヒーであり、手作りケーキと伺いました。お主人はカナダに留学され、その際にスターバックスでブラックエプロンに合格した経験があり、今も独学でコーヒーについて学びを続けておいでです。豆も焙煎したものを買うと、どんどん劣化してしまうので自家焙煎にされているそうです。ルワンダのカリシンピを中心に、ケーキや気分で選んでいただけるように複数の豆をご用意されておいでです。
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