徳川家康の時代に整備された中山道は、江戸と京都を結ぶ街道です。街道上の六十七宿のうち、「奈良井宿」は江戸からも京都からも三十四番目の宿場町です。約1kmにわたって家並みが続く奈良井宿は、鳥居峠という難所をひかえ、中山道木曽十一宿中最も賑わった宿場町で、「奈良井千軒」とも謳われていました。歩くだけでもタイムスリップ感覚を味わえる町並みは国の重要伝統的建物群保存地区に指定され、かつての面影を今に伝えています。
その中でにひときわ美しい格子と大きな杉玉が目を引く町家があります。築200年の酒蔵を改修した古民家宿「BYAKU Narai」です。奈良井宿のシンボルだった「杉の森酒造」は1793年創業で木曽五大銘酒として愛されてきました。2012年に惜しまれつつも休眠しましたが、2021年に官民連携の「古民家改修プロジェクト」の一環として、建物の一部が宿泊施設「BYAKU Narai」として再生されました。
備え付けの露天風呂なので、他の宿泊者に気を使わず、自分だけの寛ぎのひとときを楽しむことができます。蔵と蔵の間にあるお風呂なので両側に蔵のなまこ壁の意匠を愉しむことができます。他の宿泊者の影響を気にせず、専用の露天風呂でリラックスでき、温泉の効能を最大限に享受できます。特にカップルや特別な日には、プライベートで優雅なひとときを味わえます。
ととのい椅子
ここでは、アウトドア用デッキチェアを露天風呂でのととのい椅子として活用いただいています。このような環境では、耐候性の高い素材が必要とされます。湿気や水に強い特性が求められ、湯船周辺に配置されることで、快適な入浴体験をサポートします。特に露天風呂の環境では湿気が高まるため、一般的なアウトドアファニチャーよりも、さらに優れた耐候性が要求されます。
ととのい椅子とはサウナから出て水風呂に浸かり、外気浴をする際に使用する椅子をいいます。サウナでのリラックス状態を取ることを「ととのう」と呼ばれる事からその様に使われています。一般的には「ととのい椅子」という特定の商品名は存在せず、主にアウトドア用の椅子が利用されます。この椅子はガーデンチェアやリクライニングチェア、またデッキチェアなどの種類があります。
「EXA デッキチェア」はアセチル化木材アコヤを使ったアウトドアファニチャーです。世界的に「腐らない木材」として認識されている素材です。天然の木材に対して化学反応により新しい有機物質を導入するのではなく、既存の自然成分から成り立っているため、環境に対する負荷がない素材です。これはその素材を用いてリートフェルトによるレッド&ブルーチェアを屋外仕様に転化させたプロダクトです。
ここからは別棟の2階にあるテラスです。屋外の囲まれたテラスにととのい椅子としてデッキチェアをお使いいただいています。正面に控える山林に面しながら抜ける様な空の下、気持ちのいい空間が広がります。
ヘリット・トーマス・リートフェルト(Gerrit Thomas Rietveld)
オランダのユトレヒトに生まれます。家具職人の父のもとで修業し、1911年に自分の家具工場をはじめる。1918年モンドリアンらとともに芸術運動デ・スティルに参加。デザイナーとしては「レッド&ブルーチェア」、建築家としては、シュレイダー邸が有名です。
デ・ステイル(De Stijl)
デ・ステイル(De Stijl)は、1917年にオランダのライデンで創刊された雑誌およびその雑誌に基づくグループで、オランダ語で「様式」を指す言葉です。グループの理念は、主にモンドリアンが提唱した新造形主義(ネオ・プラスティシズム)に基づいており、画家テオ・ファン・ドースブルフによって率いられました。
デ・ステイルのアーティストたちは、垂直と水平の要素を用いて非常に抽象的で幾何学的な作品を生み出し、色彩や形状を極限まで単純化しました。初期はモンドリアンの影響が強かったが、ドースブルフは後に建築を重視し、垂直と水平に加えて対角線を導入した要素主義(エレメンタリズム)を提唱しました。
デ・スティル、リートフェルト、アコヤ、と日本人にとって全く関係のわからないその3者、共通して言えるのはオランダです。数少ない芸術作品を輩出しているオランダの魅力はバウハウスにも匹敵するその要素主義(エレメンタリズム)と言われるものです。デ・スティルとリートフェルト更にバウハウスは同時代なので関連がないわけはありませんがアコヤは現代です。オランダが作り出すそのエレメンタリズムを偶然とは言いながらここで融合できたのは幸運です。
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