私たちの設計事務所は、建築デザインと工業デザインを専門とし、その両者から得た知見を基に2001年から住空間向けの工業製品の開発と製造に着手しました。製品の集合体を「margherita / マルゲリータ」と名付け、それを流通に乗せていく手法を試みました。
margheritaとは、英語ではマーガレット、日本語で雛菊とも呼ばれるキク科の植物です。花を構成する美しい自然の例から着想を得ています。雛菊の花は一見一つの花に見えますが、「花弁」、「雄蘂」、「雌蕊」、「がく」の4つの要素から構成される1単位の花が集まった集合体です。その形を模索しました。
その様な漠然とした目標を据え、私たちは住空間向けのプロダクトデザインを始めるにあたり、単発的で互いの関連性が薄いプロダクトを製作していきました。しかし同時に以下の条件は常に念頭に置いて進めてきました。
- これまでにない機能やデザインを提供すること
- 製品の成立に不要なものや装飾を排除し、ミニマルな構成に徹すること
完全な白紙の状態から建築の設計をスタートする場合、選択肢は理論的には無限です。要するに無限に存在する可能な回答の中から、実際に試行錯誤を繰り返し、最終的に1つのルートを選択することになります。しかし、その選択が絶対に正しいものであるかどうかは分からないのが建築の難しいところです。一方、室内空間に於いては、他の多くの要素が実は既に確定されているため残された選択肢の数は有限です。この有限の選択肢から、慎重に熟考されたルートを選ぶことが、ある意味で最も最適な回答に近づくことと考えられます。
更には建築に於いては、特に一つの建築単体ではほぼ不可能とも思われる「それが置かれた場所の空気を変える」という行為。ここではそのが可能性が残ります。例えばそれが置かれた室内であったり、或いは置かれた机の上の空間であったり、そんな姿を目指しました。
単発的で互いの関連性が薄いプロダクトのあるべき形を掘り下げ、関連性は薄くてもそれらが集積する事により徐々にその置かれた場所の空気を変えていく、その様な構築を試みました。