デジタル書籍が流行の兆しを見せるどころか、いよいよ本格化しそうな時代でありますが、私はまだまだ紙の書物派です。デジタル書籍の便利さは認めるものの、その読みづらさに慣れることはむずかしいようです。だから、今でも書店で本を購入し、鉛筆を右手に、線を引きながら紙の書物を読んでいます。この小さな頃からの習い性が、今後も変化するとは思えません。
そもそも我が家において、本棚はインテリアの骨格とも言えるべき家具です。なにしろ大量の本があるものですから、どうしたって本と本棚が目立ってしまいます。ならばこそ、本を合理的に整理し、見栄え良く陳列することができるよう、これまで様々な本棚を購入してきました。最初は近所のホームセンターで買ったような安物の本棚を置いていましたが、やがてデザイナーズ家具に置き換え、さらには引っ越しを契機にDIYで本棚を自作までしてしまいました。このように本と本棚には結構お金をかけてきたものですから、それらを廃棄するのがもったいなくて、今さらデジタル書籍に移行する気にはなれないという気持ちもあるわけです。
自作の本棚はすごぶる調子が良いです。なにせただの自作ではなく、友人の建築士に設計をお願いして作ったものですから、結構こだわりのある逸品なのです。デザインと構造こそシンプルですが、私たちが住んでいる部屋に合うよう、寸法がしっかりと計算されています。そのため、部屋に違和感なく馴染んでいるのです。思えば、これまで使ってきたレディメイドな本棚は、安いものにせよ高いものにせよ、妙に存在感がありすぎました。部屋の中にどっしりと構えて重々しいったらありゃしない。本棚に圧迫されているような気分になって、くつろげないと感じるときすらありました。その点、自作の本棚はよいものです。部屋の雰囲気を明るく・軽くしたいという要望のうえに設計されたものですから、生活空間にすんなり溶け込んでいます。
紙の書物がある生活には味わいがあります。素敵な本棚がある家の中には良い景色ができあがります。PCやタブレットに全部収まってしまうデジタル書籍は、私にはどうも殺風景に思えてなりません。今後ますますデジタル化が進展するでしょうが、私は時代に抗い、あくまで紙の書物にこだわっていきたいと思っています。