本を読む時間がないという人がいるけれど、本は時間を作って読むものではありません。
本は時間を忘れさせてくれるものです。
書斎というほど立派なものではありませんが、私の家にも本で満ち溢れた空間があります。
そこにあるのは本棚と小さなテーブルと椅子、そして電気スタンドのみ。
それ以外のものは一切排除し、そこでは純粋に本と向き合うことに徹しています。
子供の頃は外で遊ぶことが大好きで、読書をした覚えは余りないのですが、
高校受験を失敗し、友達と会うのが辛くて、家に引きこもった時に、
退屈しのぎで家の本棚から本を一冊取り出し、読んだのがきっかけでした。
その本は母が所蔵していた「忍ぶ川」で、大人の男女の愛の物語は15歳の私にはかなり刺激的でした。
だけど、まだ経験していない恋愛を少しだけ知り、気分は高揚し、
受験失敗の辛さなんていつの間にか忘れてしまっていました。
読書というのは、知らないことを経験させてくれると理解した私は、以来片っ端から本を読むという本の虫になりました。
第二希望の私立の高校に通うようになりましたが、幸いそこは立派な図書館があり、
見上げるくらいの本棚には本がぎゅうぎゅうに詰まっていました。
これだけたくさんの本があるなら、私はきっといろいろな場所へ飛んでいき、
いろいろな人と出会い、いろいろな感情を経験するだろうと、
ワクワクドキドキしたものです。
本というのはその年齢により、その季節により、その時の心持ちにより、読んだ時の感想が変わるということも読書を長く続けていて知りました。
例えば、太宰治の「皮膚と心」は大好きで30回くらい読みましたが、
高校生の頃は、ただただ主人公の女の人が、体の痒みを訴えて気の毒だなあと思ったものです。
だけど、大人になって読み返すと、彼女の夫の、ぶっきらぼうだけど愛情を感じられる言葉や行動に惹かれました。
物語の世界の人物に自分が近づくと、感じ方が変わるのも再読の楽しみの一つです。
一度読んだ本、いつか読みたい本、再び読みたい本、私の書斎の本棚にはそんな本がたくさん並んでいます。
一冊一冊に違う世界が広がっていて、本棚はまるで知らない世界へ通じる扉のようです。
margherita 東京ショールーム
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