本棚がそこにあることで出会える懐かしさについて

もうすっかり忘れていたずっと昔のことを、なにげない瞬間にふっと思い出す。そんな体験は、誰でも経験のあることでしょう。そのときのどこかこそばゆいような懐かしさは、それがたとえ苦味のある思い出であろうとも、必ず抱くものではないでしょうか。そのため、思い出したそれらの出来事が、とてもかけがえのない大切なもののように改めて思えてくるものです。

本棚に並べた書籍についても、そういった同様の感覚を抱くときがあります。本棚に並べていた本を入れ替えや整理などで出し入れするときに、それまでまったく内容も存在も忘れていた本を見つけることがあります。そのとき、細かい内容までは思い出せなくとも、印象に残っていた場面や人物などが、ふわっと香りが立ち上るように記憶によみがえってくるの、というものです。そのときに覚える懐かしさは、体験した記憶を思い返すときに抱く感傷と、ほとんど同じものだと感じます。

bsl-01_voice02_04記憶の引き出しという言葉がありますが、まさにその引き出しを引くのと同様に、本棚の本を手に取ることで、かつての記憶をよみがえらせてくれるのです。記憶のそれは見えませんが、本棚は当たり前ですが実在します。ですのでより、この本棚には今は忘れてしまった思い出が、山のように詰まっているんだなと、実感を抱くことができるのです。

そういうわけで、しっかりとした本棚を部屋に構えて、本をきちんと並べて置いてあるのかもしれない、とも思うのです。不意の本の思い出との再会を楽しみにするために、つねにそばに置いているのだろうと考えるのです。だから自分にとっては、かけがえのないアイテムとして、本棚がずっとあるのです。

つまりそう懐かしく思うことがあるかもしれない、そう考えてなかなか本が捨てられないでいるわけです。どんどん本が増えていく一方で、本棚がリアルにぎしぎし言い出してきそうでこわくも感じたりします。感傷にひたっている場合ではないよ、と理性的な突っ込みが頭の中で入る今日この頃です。

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