憧れても持てない書斎の代わりに

結婚して家族のいる人で、書斎を持っている人はどのくらいいるでしょう。自宅で仕事をしている人は普通「仕事部屋」を持っているでしょうが、これが勤め人になるとおそらくガクンと数が減るのではないでしょうか。日中、家にいない人専用の部屋を確保できるような大きな家に住める人は限られています。日本の住宅事情は父親の書斎などという余分なスペースを許してくれないのです。子どもが複数いる場合は、部屋はまず子ども部屋として割り当てられてしまい、お父さんの居場所はせいぜいテレビの前のソファだったりします。家で仕事をしなくてはいけないときなどは、ダイニングテーブルでパソコンを開くなどということになります。そのテーブルで子どもが宿題をしていたりするとテーブルの取り合いになり、思わず「自分の部屋に行きなさい」と声を荒らげることになるのです。

しかし、そんな環境でもリビングに本棚があれば、自分の好きな本を並べることができます。趣味の本でも思い出の詰まった本でも、また仕事に必要な本、将来の投資用として読みたい本などを並べておくことができます。本はこちらの思考を刺激するところがあります。本屋に行くと活力をもらえるような気分になる人は少なくないのではないでしょうか。まして自分で選んで、取捨選択してきた本を並べた本棚は、さまざまな方向から持ち主を励まし、鼓舞してくれるものです。背表紙を見ているだけでも今は忘れてしまった昔の夢を思い出したり、「もっとこうしたい、こんな風になりたい」という願望を抱いかせてくれたり、「こういうことを勉強しないと」という気づきが起きたりもします。

理想を言えば、書斎にこもってたった一人、お酒などを飲みながら本を開き、数ページ読んでは沈思黙考する。そんな時間を持つことが人生にとっては大切だと思うのです。

実際には、子どもが騒ぎ、テレビの音がわんわん唸っているようなリビングで、本を読もうとすると妻に何か話しかけられて集中して読めない、というのが現実かもしれませんが。