本棚は幸せの象徴

昔から、本棚と呼べるものが家にはありませんでした。本というものが家になかったのです。両親は本をまったく読まない人たちで、その影響で私も活字を読むことが苦手でしたから、教科書以外の本を買ってもらうことはほとんどありませんでした。

成人してから読書の喜びに目覚め、自分でも少しずつ本を買うようになりました。が、それでも本棚を持つことはできませんでした。狭いワンルームには本棚を置くようなスペースがなかったからです。私にとって本は、図書館や友達から借りて読むものでした。書店で買うこともありましたが、増えすぎると寝る場所がなくなる恐れがあったため、ある程度の数になると古本屋へ持っていくようにしていました。sc_voice09_01

しかしあるとき、友達の実家へ遊びにいって衝撃を受けました。書斎があったのです。友達も本好きですが、友達の父親もかなりの読書家で、書斎の壁いっぱいに本棚を置き、無数の本で埋め尽くしていたのです。それまで私は本がたくさんある場所といえば書店と図書館しか知りませんでした。個人の家に、こんなふうにたくさんの本が並んでいるのを見たことがなかったのです。私はうっとりと見惚れてしまいました。今でも覚えています。それは立派な本棚でした。マホガニーか何か分厚い木材でできていて、光沢があり、その中にたくさんの本がぎっしりと、そして整然と、並べられていました。仕事関係の本が多かったのでしょう、背表紙のタイトルは難しそうなものが多かったです。それまで本とは縁の薄い生活を送ってきた私にとって、その景色は、知的で豊かな人生の象徴のように思われました。

子供の頃とは違い、読書好きになっていた私は、自分でもいつかあんな部屋を持ちたいと思うようになりました。本で埋め尽くされた部屋です。願いが叶ったのはそれから15年も経ってからのことでした。その頃にはワンルームを脱出し、住まいに余裕があったため、一室を「本の部屋」にしたのです。マホガニー材の本棚とまではいきませんでしたが、ちょっとお洒落な本棚をいくつか買って、壁一面をお気に入りの本で埋め尽くすことができました。私の大好きな小説たち、主人のSFシリーズ、子ども達のための図鑑。そういった本に囲まれて、部屋の真ん中に置いたソファでゆっくりくつろぎながら本を読んでいると、しみじみと幸せを感じることができます。本棚のある部屋は、私の幸せの象徴なのです。

margherita 東京ショールーム

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