小学校の卒業の時、担任の先生から「卒業祝い」として文庫本を一冊もらいました。まだ小学生だったので、図書館にある大判の児童書しか知らなかった私にとっては、「文庫本」というもの、その大きさや手触り、表紙の絵や裏に書かれたあらすじ、そして帯のコピーなど、全てが「大人になった」という思いを持たせてくれましたる
それ以来、中学生になってからはとにかく、自分の本棚の一角に文庫本が並んでいくという事がとても誇らしく思え、自分が成長したと自分で思うようになり、それ以来読書の虫となってしまいました。
数年前に病気のせいで小学校の教諭という仕事を自主退職することになってしまいました。先生をしていた時はとにかく、専門書を買いあさりました。何かの本で読んだのですが、「資料は手元にあることが一番の力となる」という言葉をずっと心に置いておき、たとえその本の中の一部しか今は使わないとしても、「その本は買う」という姿勢を続けてきました。
図書館で借りていた時期もありました。しかし、いざという時「あの本にいい資料やいい事が書かれていたはずなんだがなぁ」と思う事が増え、やはり、どんなに高い本でも、本の中の一部だけが必要なものでも、見たいとき、気になる時、使いたいときに手元にあるという事が一番大切なことだと思うようになりました。
という事で、気になる本や写真集、文芸書、教育関係の専門書はとにかく買いあさりました。結果、独身時代は自分の部屋の扉以外すべて本棚となってしまい、服をかける場所や、窓さえも本棚でふさがれてしまうような状況でした。
だから、結婚して引越しをするときには大変な思いをしました。本はくくっても、段ボールに入れても相当な重さになります。それを何回も何回も運び、時には友達の車の後ろの座席一杯に本の入った段ボールを詰めて運んでもらったこともありました。
今は一戸建ての中で「納屋」にするはずだった部屋をもらって、本棚を部屋の三面に置いて本を並べています。それだけでは足りなくなったので、仕方なく文庫本や文芸関係はロフトという屋根裏のような場所に置いていました。
しかし今、仕事を辞めてしまったので専門書とはもうおさらばとなりました。という事で今までロフトで眠っていた文芸書を順におろして本棚に並べています。すると不思議と、昔読んだ本をもう一度読み直してみたくなり、今はとにかく見つけた懐かしい本をもう一度読み直しています。
若い頃にはわからなかった主人公の気持ちの移り変わりが何となく今になってわかってきたような気がして、「家の中で古本屋状態」になって過ごしています。
とにかく、やはりこうやって本を並べる場所があり、自分の好きな本がいつもならんでいて、ふっと気が向いた時には一冊抜き出してパラパラと読み始められるというのが、小さくても、夏にどんなに暑くなっても「書斎」らしきもの、いや書斎というより「本が並んでいる部屋」があるという事の幸せだと思って今日も、本棚の前に立って背表紙を眺めています。
margherita 東京ショールーム
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