デジタルには無い、本を眺める生活

本を買う最大の動機は読むためですが、その他にも楽しみ方があるのをご存知でしょうか。本とは内容もさることながら外観、いわゆる装丁にも個性があり中身が全く一緒でも発行した時期や出版社によって別物となります。装丁は本選びの基準の一つとして数えられるのです。電子書籍にはない楽しみ方でしょう。

電子書籍の登場で出版業界を取り巻く環境は大きく変化しました。場所を占有しないというメリットを持つ電子書籍は瞬く間に我々の生活圏に馴染み、カフェへ出向けばタブレットや専用の電子書籍リーダーで読書を楽しむ方が多く見られます。

急速に普及しているものの今なおインクと紙にこだわりを持つ読者が多いこともあり、電子書籍への完全移行に動く大手出版社はまだありません。しかし時代の移り変わりとともに印刷された紙媒体が日陰者になる日が来るかもしれません。その時、我々の部屋にある本棚は単なる粗大ごみに成り下がってしまうのでしょうか。

いいえ、そんなことはありません。本棚は書籍を収納するだけでなく、部屋のインテリアとしても非常に優れた機能を持っているのです。本棚のデザインによって部屋の印象が変わるのはもちろんですが、本棚単体で表現される個性だけではなく本と組み合わせることによって生まれる「センスが問われる独自のスペース」もまた重要なインテリアの一部となります。

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例えば有名な漫画「ドラゴンボール」は背表紙が巻ごとに繋がっていて、すべて並べると一枚の横長な絵になることはよく知られています。これがバラバラだったり歯抜けだったりすると格好がつきませんが、すべてを整然と揃えた時には達成感も生まれます。これは電子書籍では味わえないものです。

本の装丁は、本選びにおいて重要な要素となります。フランスの詩人、小説家のレーモン・クノー著書の「文体練習」という書籍は195ページで定価3.670円と少々割高ですが、装丁が美しく本棚に並べた時の背表紙を眺めるだけでうっとりとしてしまう一冊です。一つの文章を様々な文体で表現する言葉遊びの指導書のような内容となっており、全編カラー印刷でもなければ付録のCDが付いているわけでもありません。似たような本を探せば、半額以下で見つかると思います。それでもこの本が多くの読書家に愛されているのは、優れた本の装丁という付加価値が大きく関わっているからです。

好きな本を並べることで得られる満足感は、紙媒体の書籍と密接な関係にある本棚の特権です。これは電子書籍が真似できない部分でしょう。仮想の本棚を作ることができる端末もありますが、それは選ぶ楽しみや他人とシェアすることに特化した「見る」ためのものであり現実に並べた「眺める」ことのできる本棚とは本質的な違いがあります。

リラックスした状態で自室のチェアに腰掛け、コーヒーを飲みながら眺める本棚は格別の趣があります。中のレイアウトを変えるだけで印象も変わり、また違った一面が見られるのも楽しみ方の一つです。積ん読が増えない程度に、気分転換を兼ねて眺める時間を設けてみるのをお勧めします。

margherita 東京ショールーム

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