父の書斎と私の書斎

私は高校まであまり大きくない二階建てで育ったが、そこには「申し訳程度」と言っては失礼だろうか、父の小さな書斎があった。

中には私の背丈を越す程度の書棚がいくつかあり、廊下側の壁にも棚を作って中には主に文庫本がぎっしりと詰まり、

トイレで読む本を忘れた時などはそこから一冊拝借したものだった。

要するに父の「趣味の部屋」のようなもので、夏の盛りにクーラーがガンガンに効いているのはその部屋だったし、

そこでは父が大枚はたいて買った当時流行のPC98の画面が冒険ゲームや天文学ソフトが割り出した古代の星空などを映していた。

slf_voice21_01_thumbクーラーのつけ方がわからなかった私は夏休み、小さな部屋にこもる熱気をものともせずに忍び込んでは「大人の漫画」なんかを夢中で読みふけっていた。

そうした大人の蔵書の中には、おそらく東京勤めの折に買ったものだろうか、「ガロ」の「つげ義春特集号」があり、試しにページを開いた瞬間からその異様な世界に引き込まれ、しばし戻って来れなくなったりした。

私もあの頃の父の年齢に近づきつつある。AMAZONなどで古書を随分買い溜めてしまったが、そろそろ書斎を持たなくてはなるまい。

margherita 東京ショールーム

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